呼吸器感染症医のブログ

呼吸器疾患や感染症を中心に、日々勉強したことを主に自分の備忘録としてまとめています。

【文献】喀痰中のアスペルギルスの同定のためのHigh-volume cultureとqPCR

  • 以前の勤務先の病院では、間違いなくアスペルギルス症だと思った患者さんの痰からもなかなかアスペルギルスは検出できず、診断に難渋する症例が多かったです。(培養検査以外では画像所見や、疑う病型に応じて抗原や抗体検査を適切に評価することが重要です。)
  • イギリス国立アスペルギルスセンターではHigh-volume culture(HVC)法を使って培養検査の感度を上げているようです。普遍的な真菌なので偽陽性の見極めが重要ですが、アスペルギルスをうまく検出できていない施設ではHVC法を検討するのもいいのではないでしょうか。

 

Vergidis P, et al.

High-volume culture and quantitative real-time PCR for the detection of Aspergillus in sputum

Clin Microbiol Infect. 2020 Jul;26(7):935-940. doi: 10.1016/j.cmi.2019.11.019. Epub 2019 Dec 4.

 

目的:

喀痰培養は肺アスペルギルス症の診断に対し感度の高い方法ではないが、培養することで原因菌の同定や感受性検査が可能となり、治療法の選択に役立つ。従来の方法は、希釈した痰を一定量培養することである。著者らは、著者らが"High-volume culture"(HVC)と呼んでいる未処理の大量の喀痰を培養する方法の価値を評価した。

 

方法:

検体は、従来の培養法(37℃および45℃のSabouraud寒天培地上に、均質化・希釈化された痰の一定量を塗布し5日間まで培養)およびHVC法(30℃のSabouraud寒天上の診希釈痰を使用して14日間まで培養)で処理した。別の検体を定量的リアルタイムPCR(qPCR)で試験した。抗真菌薬感受性検査はEUCAST基準で実施した。

 

結果:

以下の疾患の患者229例から喀痰検体を得た。慢性肺アスペルギルス症(66.8%、153/229例)、アレルギー性気管支肺アスペルギルス症(25.3%、58/229例)、アスペルギルス性気管支炎(7.9%、18/229例)。侵襲性肺アスペルギルス症の患者は含まれなかった。従来の培養の陽性率は15.7%(36/229、95%CI:11.6~21.0%)、HVCの陽性率は54.2%(124/229、95%CI:47.7~60.5%)であった(p<0.001)。また、qPCRによる全体の陽性率は49.2%(65/132、95%CI:40.9~57.7%)であり、HVCと同程度であった。

 

結論:

喀痰中のAspergillus spp. の検出はHVCによって大幅に向上する。HVCは従来の培養では見逃していたであろうアゾール耐性菌の検出を可能にした。

 

【文献】胸部術後におこる片側性・上肺野優位の肺線維症

  • 原発性肺癌の肺葉切除後の患者の約3%に、術側残存肺に"fibrobullous changes"を呈するという報告があり(Tanaka H, et al. Eur J Cardiothrac Surg. 2007)、遅発性合併症として注目すべき頻度だと思います。
  • 私も実は同様の症例を学会で発表したことがあります。機序に関してもいろいろ考えましたが、論文にするほどのものは思いつかず。。

    f:id:asperu:20201123103808p:plain

    自験例。Y年に胸腔鏡下右上葉切除術後。


  • 著者の関根先生は、以前からこの病態に注目しておられたようです。以前の論文では、MRIを用いて術側の胸郭運動障害があることを明らかにされ(Sekine A, et al. Respiration. 2017)、今回詳細なCT読影とPET-CTにより得られた所見から新たな機序を提唱されています。すばらしい。荒廃した部位には高率にアスペルギルスが感染するようです。

Sekine A, et al. 

Unilateral upper lung-field pulmonary fibrosis radiologically consistent with pleuroparenchymal fibroelastosis after thoracic surgery: Clinical and radiological courses with autopsy findings

Respir Investig. 2020 Jul 10;S2212-5345(20)30067-8. doi: 10.1016/j.resinv.2020.05.001. Online ahead of print.

 

背景:
PPFEは稀な特発性間質性肺炎で、上葉主体の胸膜・肺実質病変で特徴づけられる。近年、放射線画像でPPFEに合致する片側の上肺野の肺線維症(upper-PF)が開胸手術を受けた患者で報告されており、メカニズム不明の胸郭運動障害を呈する。この後方視的研究は片側性のupper-PFの臨床的、放射線学的な経過と病理学的所見を明らかにすることを目的とした。
 
方法:
2012年3月〜2018年4月に片側性のupper-PFと診断された患者が連続的に組み込まれた。放射線画像と臨床経過は診断の前後含め一通りレビューされた。
 
結果:
14人の患者が組み込まれた。片側のupper-PFは肺癌もしくは食道癌、気管支拡張症に対する開胸手術もしくはVATS後中央値4.8年で診断された。診断前または診断時に、14人の患者のうち12人(85.7%)が、程度はわずかであったが、胸膜瘻を示唆する異常な胸腔内/胸腔外へのairの所見を認めた。 注目すべきことに、すべての患者に異常なairが現れると、upper-PF病変は明らかに悪化した。患者の9人でupper-PF部分は嚢胞性変化を呈し、内4人で最終的に肺アスペルギルス症を合併した。剖検を行った1人の患者ではPPFEと慢性胸膜炎に合致する所見を認めた。
 
結論:
片側のupper-PFは胸部外科手術後に発生し、特発性PPFEと共通する多くの臨床的、放射線学的、および病理学的特徴を持っていた。 今回の結果は、一般的に観察される異常なairが病気の発症・進行と相関している可能性があることを示した。
 

【文献】COVID-19患者における喀痰と鼻咽頭スワブ検体でのウイルス排泄期間の違い

  • 日本では6月になるまで、SARS-CoV-2陰性化を2回確認するまでCOVID-19患者を退院させることができず、医療機関の病床逼迫につながりました。
  • 現在ではCOVID-19発症から10日もたてば感染性はほぼないだろうということがわかっており、退院基準も基本症状、日数ベースとなっています。
  • そういう意味では今となってはインパクトが薄れてしまいますが、鼻咽頭よりも喀痰からのウイルス排出が長く、高齢、肺疾患、ステロイド内服、糖尿病患者ではウイルス排出期間が延長するようです。

Wang K, et al.

Differences of Severe Acute Respiratory Syndrome Coronavirus 2 Shedding Duration in Sputum and Nasopharyngeal Swab Specimens Among Adult Inpatients With Coronavirus Disease 2019

Chest. 2020 Nov; 158(5): 1876–1884.

 

背景:

SARS-CoV-2のウイルス排出期間は完全には明らかにされていない。 気道検体からSARS-CoV-2 RNAを連続して検出し、ウイルス排出の期間を決定することは、COVID-19の臨床管理を適切に行うのに不可欠なエビデンスを提供する。

 
リサーチクエスチョン:
上気道および下気道の検体におけるSARS-CoV-2 RNAの排出期間はどのくらいなのか? 関連する危険因子は?
 
方法:
2020年2月10日から2020年3月20日までに武漢の2病院に入院したCOVID-19患者68人について、 鼻咽頭スワブ(NPS)と喀痰のペア検体で連続でSARS-CoV-2RNA検出を実施した。 患者の臨床的特徴は、さらなる分析のために記録された。
 
結果:
SARS-CoV-2 RNAは、48人の患者(70.6%)のNPSから、および30人の患者(44.1%)の喀痰検体から検出された。 喀痰検体からのウイルス排出期間の中央値(34日;四分位範囲[IQR]、24-40)は、NPSからのウイルス排出期間(19日; IQR、14-25; P <.001)よりも有意に長かった。 高齢者は、SARS-CoV-2のウイルス排出時間の延長に関連する独立した要因であった(ハザード比、1.71; 95%CI、1.01-2.93)。  9人の患者で、NPSが陰性になった後にウイルスRNAが喀痰で検出されたことは注目に値する。 慢性肺疾患とステロイドは喀痰中のウイルス検出と関連しており、糖尿病はNPSと喀痰の両方でのウイルス検出と関連していた。
 
解釈:
COVID-19の患者は下気道からウイルスをより長く排出する可能性があり、感染リスクの長期化に影響を与える可能性があるため、これらの所見は検査ベースのウイルス排出基準に影響を与える可能性がある。 さらに、ウイルス排出期間が延長される可能性がある高齢患者には、さらに注意を払う必要がある。